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最高裁判所第二小法廷 平成3年(オ)155号 判決

上告人

株式会社日本リース

右代表者代表取締役

佐々木實

右訴訟代理人弁護士

木戸孝彦

池田映岳

原田肇

被上告人

更生会社日東工営株式会社管財人

藤井鎮男

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人木戸孝彦、同池田映岳、同原田肇の上告理由について

一  原審の適法に確定した事実関係の概要は、次のとおりである。

1  上告人は、昭和五六年一一月一八日、日東工営株式会社(以下「日東工営」という。)との間で、本件事務機器(以下「本件物件」という。)について、いわゆるファイナンス・リース契約(以下「本件リース契約」という。)を締結し、同年一二月一日、本件物件を日東工営に引き渡した。本件リース契約には、上告人は、本件物件を株式会社ドッドウエルビーエムエスから買い受けて、日東工営にリースすること、リース期間は六〇箇月とすること、リース料は月額三万四六六〇円とし、第一回分は本件物件の引渡日に、第二回分以降は毎月二七日限り支払うこと、日東工営は、本件物件の点検・整備、修繕・修復をすべて自己の責任と負担で行うこと、リース期間中、本件物件を使用しない期間又は使用できない期間があっても、理由のいかんを問わずリース料の支払義務を免れないこと、本件物件の引渡し後は、日東工営は、本件物件の一切の瑕疵に関し、上告人に対していかなる請求もできないこと、本件物件が、天災地変等により、滅失し、又は毀損・損傷して修理・修復が不能となり、上告人がその事情を認めたときは、本件リース契約は終了するが、その場合は、日東工営は一定の損害金を支払うこと等の約定があり、右リース料は、リース期間満了時において本件物件に残存価値はないものとみて、上告人が右期間中に本件物件の取得費その他の投下資本の全額を回収できるように算定されたいわゆるフルペイアウト方式によるものであった。

2  日東工営は昭和五八年八月三〇日東京地方裁判所に会社更生手続開始の申立てをし、同裁判所は、同年一二月二三日、会社更生手続の開始決定をし、被上告人が更生管財人に選任された。

3  上告人は、同年一〇月分以降のリース料の支払がなかったので、被上告人に対し、昭和五九年二月八日、右リース料の支払を催告し、同年五月一五日、本件リース契約を解除する旨の意思表示をした。

二  本件訴訟は、上告人が被上告人に対し、未払のリース料と遅延損害金の支払を請求し、また、右解除の意思表示により本件リース契約が解除されたことを理由に約定の損害金と遅延損害金の支払等を請求するものであるところ、論旨は、未払のリース料債権は会社更生法一〇三条一項、二〇八条七号の規定による共益債権であるから、上告人は会社更生手続によらないで随時その請求をすることができ、また、日東工営はその支払を怠ったから、本件リース契約は前記の意思表示により解除されたと主張する。

三  しかしながら、いわゆるフルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約において、リース物件の引渡しを受けたユーザーにつき会社更生手続の開始決定があったときは、未払のリース料債権はその全額が更生債権となり、リース業者はこれを更生手続によらないで請求することはできないものと解するのが相当である。その理由は、次のとおりである。

右の方式によるファイナンス・リース契約は、リース期間満了時にリース物件に残存価値はないものとみて、リース業者がリース物件の取得費その他の投下資本の全額を回収できるようにリース料が算定されているものであって、その実質はユーザーに対して金融上の便宜を付与するものであるから、右リース契約においては、リース料債務は契約の成立と同時にその全額について発生し、リース料の支払が毎月一定額によることと約定されていても、それはユーザーに対して期限の利益を与えるものにすぎず、各月のリース物件の使用と各月のリース料の支払とは対価関係に立つものではない。したがって、会社更生手続の開始決定の時点において、未払のリース料債権は、期限未到来のものも含めてその全額が会社更生法一〇二条にいう会社更生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権に当たるというべきである。そして、同法一〇三条一項の規定は、双務契約の当事者間で相互にけん連関係に立つ双方の債務の履行がいずれも完了しない場合に関するものであって、いわゆるフルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約において、リース物件の引渡しをしたリース業者は、ユーザーに対してリース料の支払債務とけん連関係に立つ未履行債務を負担していないというべきであるから、右規定は適用されず、結局、未払のリース料債権が同法二〇八条七号に規定する共益債権であるということはできないし、他に右債権を共益債権とすべき事由もない。

四  そうすると、前記事実関係の下においては、上告人は被上告人に対し、本件リース契約に基づく未払のリース料債権を会社更生手続によらないで請求することはできず、また、会社更生手続開始決定の後は、未払のリース料の支払を催告して本件リース契約を解除することはできないというべきである。これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は、採用することができない。

よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官大西勝也 裁判官中島敏次郎 裁判官根岸重治 裁判官河合伸一)

上告代理人木戸孝彦、同池田映岳、同原田肇の上告理由

第一点、原判決は本件リース契約についてリース業者の未履行債務は使用収益受忍債務という消極的な不作為債務にすぎないとし、ユーザーの未履行債務であるリース料支払債務とは不均衡であるとして、リース料支払債務に対し会社更生法一〇三条一項の適用を否定し、リース料債権の共益債権性を否定した。

しかしながら、原判決の右認定は明らかに会社更生法一〇三条一項の解釈を誤った違法なものであり、結果として憲法で保障されているリース業者の財産権を侵害しているものであり破棄されなければならない。

一 リース料請求権は法一〇三条の双方未履行の双務契約に基づく債権として共益債権として取扱われるものである。

1 ファイナンス・リース契約においても通常の賃貸借と同様貸主はリース期間中、借主にリース物件の使用収益権を付与するものであり、その内容は借主にリース物件を引渡すことに留まらず、引渡後も借主がリース物件を使用収益することを受忍し、借主の使用収益権を妨害する行為をしない義務を負っている。

またリース契約においては借主からの中途解約は認められないが、リース契約締結時においてリース期間中の全リース料債権が確定債務として発生するわけではなくリース料債権はリース期間の経過に伴い随時発生するものであるから、リース料の算出方法の如何に拘らず、リース料と前記貸主の義務とは対価関係にあるというべきである。

従ってファイナンス・リース契約に会社更生法一〇三条が適用されることは明らかである(松田安正・リースの理論と実務二一九頁乃至二二五頁、伊藤眞・ファイナンス・リースと破産・会社更生・判例時報一〇四七号一八頁乃至二〇頁参照)。

本件において被上告人は、リース物件の使用を継続し、上告人の返還請求を拒否しているので、被上告人は、リース契約の履行を選択したというべく、上告人のリース料債権は会社更生法二〇八条七号に基く共益債権となる。

しかもリース契約における貸主の未履行債務は前述したところから明らかな如く給付に可分性がないから更生開始決定後のリース料はもとより、開始決定前のリース料であっても共益債権としての地位が認められるというべきである(伊藤・前掲・判例時報一〇四八号一三頁及び一四頁参照)。

そして共益債権については、更生手続によらない随時弁済がなされるべきものであるから(会社更生法二〇九条)、被上告人は本件リース契約の条項に従ってリース料を支払うべく、被上告人がその支払を怠ったときは、上告人は、その条項に従って契約を解除してリース物件の返還及び規定損害金の支払を請求できるものである(伊藤・前掲・判例時報一〇四八号一二頁参照)。

2 リース業者はリース物件をユーザーにリースして使用収益させるためにメーカー或いはディーラー等の売主より買受け、その所有権を取得するものであるが、この所有権は取得目的がユーザーにリースすることを目的としていることを除けば、いかなる意味においても法律上完全な所有権の取得であって、譲渡担保権又は所有権留保における所有権の如き担保的機能のための所有権ではない。

ところで、リース業者がリース物件の所有権取得のために購入代金として支払われる対価は、ユーザーがリース期間中に支払うリース料によってのみ回収されるものであり、リース業者はユーザーから支払われるリース料により、リース物件取得に要した購入代金元金(リース業者は購入代金の殆ど全てを銀行等の金融機関からの借入金で賄っているものである)及び、かかる元本相当額の導入に要した金利の支払、リース期間中のリース物件維持に要する固定資産税及び損害保険料を賄っているものである。

3 リース期間は、リース取引に関する国税通達(昭和五三年七月二〇日直法二―一九、直所三―二五)によりリース物件の法定耐用年数の一〇〇分の七〇(法定耐用年数が一〇年以上のリース物件については一〇〇分の六〇)というように適正期間が定められており、これより短いものについては、月々のリース料の全額が適正な月額賃借料即ち一ヶ月の賃借期間に対応する適正な使用収益の対価とは認められず、一部は前払費用とみなされることになっている。

従ってリース業者はユーザーがリース物件の耐用年数の六〇乃至七〇パーセント以上の期間に設定されているリース期間全体にわたって適正な賃借料を支払うことによって、はじめてリース業者としての適正な収益並びにリース取引において出損する経費も回収できるのであって、法定耐用年数の六〇乃至七〇パーセントを経過した後のリース物件は、新品価格に比してその市場価格は著しく減少するものである。

4 しかも、リース物件は、リース期間経過後の市場価格とは関係なく、且つ汎用性の有無とは無関係にユーザーの希望する物が選択されるものであって、かかる取引はユーザーがリース期間中リース料を支払うという高度の信頼関係の下に成立しているものであり、制度上もかかる計算の下にリース業者の採算も成立しているのである。

このことはユーザーに対し会社更生法が適用される場合においても何ら変わるものではない。

先ずユーザーは工場設備、機械設備、什器備品、自動車その他事業遂行に必要な全ての物件について自ら購入するか、リースを受けるかの全く自由な選択権を有しているものであり、リースを受けた場合は、リース会社が所有する物件を賃借するものであり、リース料のみを支払えば、リース物件を使用することができるのであって償却の手間も、固定資産税、保険料の負担も必要なく、しかもリース料全額が経費として認められ、購入した場合に比して加速償却によるメリットが得られることを期待してリースを選択し、しかもリースを受けている間、かかるメリットを享受しているものである。

従って、リース取引においては一般の賃貸借契約と同様ユーザーに会社更生法が適用された場合においても、ユーザーがリース物件を使用し続ける限り、リース業者に対し、リース料を共益費用として支払わねばならないのであり、リース料の支払債務と使用収益とは正に対価性を有するものである。

万一、会社更生法の下でユーザーが、リース料を共益債権として支払うことなくリース物件の使用収益が可能であるとすれば、ユーザーはリース業者に対し会社更生手続開始後毎年固定資産税、損害保険料、物件購入代金導入のための元金及び金利等の支払分を負担させながら、リース物件を何らの負担なく使用できることになり、著しく公平を欠くものである。

この点について原判決は「リース期間中の損害保険料の支払債務、リース物件に関する固定資産税の負担債務、日東工営が負担した修補費に係る保険金請求債務、売主に対して有する瑕疵担保請求権の譲渡債務等の本件リース契約の付随的債務が日東工営の負担するリース料支払債務と法律上関連性があり、互いに担保視しあっていると認めるべき契約上の定めや根拠は見当たらない。」として、「リース業者が右付随的債務を負担していることをもって、法一〇三条一項所定の対価的関係にある未履行債務に該当すると認めることはできない。」と述べているが、これらのリース業者の債務は全て、ユーザーがリース料を支払うことによって履行されるものであり、リース契約においては、ユーザーがリース料支払債務を不履行とする事態はリース業者による契約解除権の行使となる解除原因の生ずる事由としてしか想定され得ないものであり、リース料を不払いとしながらリース契約を継続するというような原判決が述べる事態を想定していないのである。

従って、リース料不払いによりリース契約が解除されたときは、リース業者にとって返還されたリース物件のその後の処理に応じて、固定資産税或いは損害保険料等の支払債務も消滅するものであり、リース料支払債務とかかる費用の支払債務とはその意味において正に法律上、経済上互いに関連性があるものである。

また、リース契約解除後発生する規定損害金支払債務は前述のリース業者が導入した購入元本の返済債務と法律上、経済上互いに関連性を有するものである。

結局、ユーザーはリース料のみを支払っている限り、リース物件に関し取得費用も固定資産税も保険料も負担しなくてよいということであり、このことはリースの本質とも云える問題である。

従って、過去数多くの判例がリースの解除後における規定損害金の発生を妥当なものとして認めた背景もかかる点に存在するわけである。

かかる本質は会社更生法適用の下に於ても、何ら変化すべきではないし、契約上もリース制度の本質からも全く想定されていない事態即ちユーザーに対しリース物件の使用収益を許す傍らリース業者に新たな負担をかけさせながら更生手続上債権の縮小がなされるならば、リース物件の使用損耗による価値の減少と相俟ってリース業者の財産権を不当に侵害するものであり明らかに憲法に違反するものである。

二 なお、リース物件の所有権がリース業者にのみ帰属することにつき若干付言する。

1 更生会社はリース物件についてリース期間中即ちリース期間の開始時から満了時までの間、月額リース料の支払いを継続する限り、且つその支払いを条件としてリース期間のうち月額リース料の該当月の間、リース物件を使用する権利を取得しているにすぎず、それ以上にリース物件に対し何らの権利も有しているものではない。

リース物件に対してリース業者が有する権利はリース物件に対する所有権であって、この所有権はリース期間の期間中及び前後を問わずリース業者に確定的に帰属しているものであっていかなる意味においても借主に移転することはない。

2 リースはアメリカより導入されたものであるが、アメリカで始まり我が国でも引き継がれたリースの仕組みは税務対策から生じたものであり、その詳細は以下の通りである。

a リース取引に於て企業はリース物件について減価償却を加速させることができることになる。

b 即ち、法人税は単純化すれば収入より経費を控除した残額に課せられるが、企業は物件を購入した場合、自らの所有する減価償却資産として耐用年数に従って減価償却を行い、各年の償却額をその年の経費とするが、耐用年数は法律により定められているため、法定耐用年数を短縮させて、各年の償却額を増加させることにより加速償却を行なうことはできない。

c ところが、企業にとって加速償却が可能となればそれだけ節税を行うことができ、余りを新規設備の導入、開発等に向けることができる。

d 従って、法定耐用年数より短い期間のリース中のリース料として支払ったとしても、リース料は法人税法上経費として認められ、収入より控除されるのでまさに加速償却を行なったのと同じ効果を得ることができるのである。

e しかしながら、リース契約に於てリース期間経過後に借主にリース物件の所有権が移転するような買取り条件が付されている場合、これは実質的に売買と同一とみなされ、脱税行為としてリース料の経費として控除が否認されることになる。

3 以上の次第であるからリース契約に於ては、リース期間中途乃至終了時に於てリース物件の所有権が移転しないことが不可欠の条件であり、このことがリース制度存続のための必然的帰結であって「税務上の損金処理を認めて貰うための便宜的なもの」ではなく、リース業者は自らがリース業者として存続するためにリース期間満了後のリース物件の所有権を所有し続けることに利害を有するものである。

4 リース業者のリース物件に対する所有権はいかなる意味においても担保的機能を有するものではなく、会社更生法に云う特別の先取特権、質権、抵当権又は商法による留置権とみなされるものではない。

5 最近会社更生法におけるファイナンス・リースの取扱いについて、原判決がなしたのと同じ誤まりをする立場において、その殆どがファイナンス・リースを以て所有権留保約款付割賦売買と同一視するところから生じている。

しかしながら、この二つは単に契約の形成により異なるものではなく、本質において異なっているのである。

その差異について以下詳述する。

(1) 割賦売買における割賦売買代金とリース契約におけるリース料合計額の意味の差異

a 売主は通常売買物件のメーカ或いはディーラーその他の販売業者であるが、これらの売主は物件の売買価格を自らの判断で決定することができる。

この売買代金の決定に際しては製造原価乃至取得原価、瑕疵担保による負担、貸倒れによる損失の負担、販売促進費その他の諸経費、自らの収益等が勘案される。

そこで、売主が買主の都合により所有権留保約款付割賦売買を行う場合においても、その基礎となる売買代金の算定には売主が自らの判断で決定した一切のリースク負担が含まれているのであり、割賦売買代金総額はこの売買代金に金利を加算すれば算定できるのである。

b これに対し、リース業者はリース料金算定の基礎となる購入代金を自ら決定することはできないのであり、購入代金はリース業者が関与する以前に売主と借主との商談の中で既に決められているのが通常である。

従って、リース料の中には購入代金以外には金利、税金、保険料等の経費以外にはリース業者の利益が含まれているのみであって、瑕疵担保による負担或いは貸倒れによる損失の負担等のリスク負担は含まれていない。

c 即ち、売買においては売主の関心事は売買物件をいくらで売るかということを自ら決めた上で、その代金の回収を図ればよいのであるが、リースにおいてはリース業者はリース物件を貸すことによって生ずる経費を全て回収しなければならないのである。

d 従って、リース料には本質的に経費の回収という要素が含まれているものであり、それが全てであると云っても過言ではない。

(2) 割賦売買における所有権留保とリース業者の所有権の意味の差異。

a 所有権留保約款付割賦売買における所有権留保は売主が買主に対し割賦売買代金の履行を強制させるための担保として留保するものであって、当然のことながら代金が完済されたときは、所有権は買主に移転されるものである。

この点は、割賦売買において買主が割賦金の支払いを怠り、期限の利益を失った場合においても、買主が残金を一括支払えば、買主は売買物件の所有権を取得することができるのである。

b これに対し、リース契約においての所有権は前記(二)で述べたとおり、借主に移転することはないのであり、借主がリース料の支払いを怠ったときは将来リース料を全額払うという義務は発生せず、リース契約は解除され、借主はリース物件をリース業者に返還しなければならないのである。

c 従って、リース業者の所有権には何らの担保的機能も存在しない。

リース料不払いを以てリース物件の返還義務が生ずるのは、リース業者が所有権を有しており、その担保権を行使したからではなく、リース料不払いにより、リース契約を解除されるという契約上の債権的効果にすぎない。

(3) 割賦売買における目的物件とリース契約におけるリース物件の意味の差異

a 割賦売買においては売主の目的が売買代金の回収であり、留保した所有権は代金の担保であるから、担保的機能が存在しないような物件即ち使用による価格の減少が著しいような物件、或いは持運び容易で所有権が失われ易い物件等は本質的に所有権留保割賦売買になじまない。従って、全ての物件が販売業者によって所有権留保割賦売買の対象となるものではない。

一般的には工作機械、産業機械、建設機械等の転売可能な物件、価値の減価率が緩かなものが対象となるものである。

b リースにおいては、借主が使用を希望し、リース業者が所有権を取得できる物件の全てが対象となるのであり、使用開始と同時に価値が極端に下落するような物件であっても、リース会社はリース物件として取扱うものである。

c 従って、リースにおいては借主がリース物件をリース期間中使用して、リース料を支払い続けるということが必須条件であって、かかる信頼の下にリースは存在するのであり、リース物件の所有権を以て担保的機能と考えなければならないとすれば現在、目的物件として取扱われているリース物件の相当部分がリースにとって不適合ということになる。

(4) 割賦売買における割賦期間とリース契約におけるリース期間の意味の差異

a 割賦売買においては、留保した所有権が代金の担保であるから、担保価値が失われるほど長期にわたって割賦期間が設定されることはなく、通常一二回(一年)から二四回(二年)である。

b これに対し、リース契約においてはリース期間が本来税務上の耐用年数と密接な関係を有しているため五年から七年という長期にわたって設定されるものであり、耐用年数を著しく短縮する期間設定は税法上リースとしては認められない。

c 従って、リース期間の設定自体、担保という発想とは無関係に設定されるものである。

6 以上のとおり、リース契約と所有権留保約款付割賦売買契約とは、法的はもとより、経済的にも、税務的にも、当事者の契約の目的からも明らかに異なるものであり、これをひとり会社更生法においてのみ管財人が恣意的に独断の解釈で同一視して取扱うことは許されないものである。

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